最後の夕日

・いちゆきさん

恋をする事、愛するという事、
そんな人を思う気持ちというものは、どこまでも無限大に存在します。
お互いが、お互いを見詰め合い、その人を知り、心を許し合い、
互いの気持ちを確かめ高め合って、愛は深みを帯びて行きます。
共に歩んで行く道の中で、あらゆる苦難や逆境にさらされながらも、
互いを助け合い励ましあってかけがえのない日々が刻まれていくのです。
そして、そんな共に過ごした日々の全てが去り行く思い出に変わるとき、
最後に共に歩み辿り着いた場所が『最後の夕日』の舞台です。

愛は深いほどに、その終焉を迎えるときは悲嘆に暮れるものです。
そんな、悲しみにも別れを告げ、
違えてしまったそれぞれの明日を夕日と共に映し出しています。
共に求め追いかけた大きな夢。
それは、本当はほんの些細なものだったのかもしれません。
それでも、そんな二人にとってのかけがえのない日々が、
帰らぬ日々となってしまいました。
共に、求めたものが遠くへと行ってしまったのです。
けれども、二人の間に後悔の念は一切感じられません。
これまで、過ごしてきた二人の時間が少しも無駄ではなかった事。
そして、互いの幸せを願いこれまでの時間を糧として、
常にこれから自分の信じる明日を見つめているからです。

恋が愛に変わることはあっても、愛が恋に変わることはありません。
まだ見ぬ恋を最後の恋とし、
この愛の全てを最後の恋へ捧げたいという思いが表されています。
それらの思い、そして、それほどの思い。
最後には温かかった思い出を胸にそれぞれの道を進み、
また、新たな夢の行き着く先を見出しています。

これら、哀愁漂うメロディーに乗せられた、
実にロマンティックな物語は、失恋の曲とも、別れの曲とも
言葉足らずになってしまう程の意味合いと共に奏でられています。
悲しみと寂しさの行く先には常に明日を見つめる希望に満ちた眼差しがあります。
そこには、終わり行くものの中にも始まりを見出されていますね。
そんな、二人の最後のひと時をあいchanは
そっとエールを送るようにとても丁寧に歌い上げています。
『最後の夕日』は大人な二人を、素敵な別れで送られた、ひとつの物語なのです。

(2006.04.22掲載)