雪に咲く花

・いちゆきさん

しっとりとしたピアノの伴奏から始まり、
どこか切なさと温かさを予感させてくれるこの曲のテーマは大人の恋愛です。

互いの事を想い合う二人にとって、
二人でいる一日は何物にも変えがたい大切な時間です。
そんな一日の中で、最もお互いが愛おしく想える時間が夕闇と共に訪れてきます。
二人でいた時間の一秒一秒を噛み締めるかのように、
まだ、二人でいる喜びと、
迫り来る「さよなら」の時間を迎えなければならない切なさを、
静かなメロディーを背にしっとりと歌い上げています。

大切な人を想う気持ちは時間や空間をも越えて行き、
決して離れる事はありません。
淋しさに打ちひしがれて、思わず涙してしまう一人の夜でも、
大切な人に守られている事の心の温かさや、
また、大切な人を守っていきたいと思う気持ち。
これらが優しさを通して互いの中に溶け込んでいきます。

そんな静かな夜も、綺麗な表現でとても丁寧に歌われています。
また、アレンジの方もピアノとストリングスのコラボレーションが
曲のメロディーを引き立て、目を閉じて曲に触れると、
その情景が浮かんでくる感じがしますね。

ひとつの想いが、やがて恋へと変わっていきます。
別のところで、またひとつの恋が生まれます。
そんな、ふたつの恋と恋が重なり合ってひとつの愛へと生まれ変わるのです。
この曲ではその愛を『雪に咲く花』と表現しています。
冷たい雪の中から姿を現す花はとても強く熱いものなのです。
実際には目にすることの出来ない『雪に咲く花』は、
美しさに磨き上げられたメロディーと共に、世界でたった一輪、
この曲の中だけに咲き続ける温かい花なのです。

(2005.12.04掲載)