2011年8月6日 やまだひさしのラジアンリミテッドフライデー
Pocky放課後のMUSIC ROOM公開収録
@釜石市鈴子広場(岩手)

・演奏曲目

旅立ちの日に・・・
大丈夫だよ
カケラ

・レポートその1(ひいらぎさん)

2011年3月5日、
微かに雪の舞う新花巻駅から乗った、三両編成の小さな列車、
そのゆったりとした時間は、
私をゆっくりと日常から離していってくれた。
私は、遠野で降りたが、
その列車は、釜石へ、宮古へと、
同じ速度で走り続けて行った。

一週間後、
同じ列車に乗っていた人たちの姿を、
なんでもなかったはずの風景を、
思い出していた。
あの車内にあった雰囲気は、
そこで暮らす人たちの日常だった。
皆いつものように、釜石へ、宮古へと向かっていたはずだ。

みんな、大丈夫だったろうか。



今日、
懐かしい景色を想いながら、
再び同じ列車に乗った。
遠野を越え、あの日見なかったその先へ、
終点の釜石まで、私は揺られていった。

以前はこの釜石から、
北へ、もしくは南へ、路線が続いていたようだが、
その乗り換えホームへの通路は、今は暗く、閉鎖されていた。
ここが、事実上の終着駅となっていた。

黒い服を身にまとった人たちの姿もある。
今は、様々な想いを運ぶ列車となっていた。





釜石市鈴子広場
小さな町の小さな広場は、
ちっちゃな子供たち、家族連れで、賑わいをみせていた。
それは一時的で、ささやかな賑わいだったかもしれないけれど、
人の心をあたたかくする、大切な賑わいだった。

ポッキーの真っ赤なグリコワゴンが止まっていて、
その広場の入り口では、お菓子が配られていた。
ステージでは、マギー審司さんのマジックや
きただにひろしさんの歌が、その場に笑顔を届けていた。
走り回る子供たち。
とても微笑ましい、優しげな時間だった。



「こんにちは〜っ、川嶋あいです。」
「今日は釜石のみなさんに、」
「少しでも元気を届けられるよう、歌っていきたいと思ってます。」

小さなステージの上の川嶋さんは、
長い髪が柔らかな風になびいていて、
背景には、山々とたくさんの緑が輝いていた。


「釜石では初めてのライブになります。」
「今日、東京から来たんですが、」
「6時の新幹線に乗って、着いたのが、11時、」
「遠いですね〜っ。」
優しい笑顔だった。
集まった人たちからも優しい笑いがこぼれていた。

遠く離れた場所、
でも、今ここに、川嶋さんはいる。
それは、とてもとても優しい空間だった。


「東日本は、まだまだ深い悲しみに包まれていて、」
「まだまだ長い復興の道のりが続くと思います。」

「私自身、何かしなくちゃいけないって考えて、」
「やっぱり、」
「元気な私が、」
「元気に歌って、」
「元気な歌を作っていきたいと思ってます。」
可愛らしい笑顔だった。


芝生に座る家族が皆、
その歌い出しから、
川嶋さんの歌に合わせて、
自然に、ゆっくりと、左右にリズムをとっていた。
それは、とても優しい光景だった。

ときに暑い日差しが射し込み、
ときに強い雨に打たれていたけれど、
全部が、気持ちよく感じられた。

この大自然に囲まれた、
小さくあたたかな空間に聴こえてくる「カケラ」は、
透き通るくらい美しかった。


「これからも、」
「”微力だけど無力じゃない”って言葉を信じて、」
「精一杯歌っていきたいと思ってます。」


そうだ、
みんなに訊いておけばよかった。
今日の川嶋さん、なんだかとてもちっちゃくて、
とても可愛らしかったんだよ。

小さな町を歩いてゆく川嶋さんの後ろ姿が、
でも、
とても優しげに見えたんだ。


川嶋さん、可愛かったな。

あったかい一日だったな。


ありがとう。

(2012.08.22掲載)