2011年3月21日 西日本チャリティライブ
@心斎橋 BIG STEP(大阪)

・演奏曲目

旅立ちの日に・・・
カケラ
12個の季節〜4度目の春〜

・レポートその1(ひいらぎさん)

震災に際し、
わずか数日で決断し、
四日後にはレコーディングを終え、
六日後には路上に立っていた川嶋さん。

わずか五日間で、
広島
福岡
山口小野田→防府
兵庫三宮→川西
大阪
という行程は、
私にはイメージすら出来なかった。

でも、
いつだってそうだった。
川嶋さんは、
私たちの想像をはるかに超えた、
深い愛情を持っている。

川嶋さんの決断と行動で、
たくさんの気持ちが集まっていた。
その義援金は、直接的に被災者の助けになることだろう。

もしかしたら、
呼び掛けだけでは集まりきらなかったかもしれない気持ちを、
川嶋さんは、
自ら足を運び、たくさんの優しさを集めて回っていた。
慈愛に満ちた、美しい人。

私自身の気持ちの変化があったからかもしれないけれど、
川嶋さんは、
回を重ねるごとに、
格段に、表情に嬉しさが満ち溢れていっていたように感じられた。
各地の、たくさんの人たちの優しさは、
被災者へだけでなく、
川嶋さんへも力を与えていたのかもしれない。

どの会場でも見られた、
川嶋さんへ集まる人たち、
募金箱に続く長蛇の列、
募金をする父親、母親、男の子、女の子たち、そして、川嶋さん、
すべての表情が優しさに溢れていた。





三ノ宮駅前

私は最初、その場所がわからなかった。
この大きな街の、駅前の広場に、
キーボードが置かれている風景を、
私は上手く想像できていなかった。
でもそれは、川嶋さんのキーボードだった。
間違いない。ここで歌うんだ。

なかなか掛からない発電機を、
何度も何度も掛け直す。

人も車も行き交うこの大きな喧騒の中で、
準備が進められる。
本当だ。
川嶋さんは、路上で、歌うんだ・・・。


十分でない機材、
今日も川嶋さんは、「大丈夫だよ」を一旦弾き止め、
また最初から弾き始める。

「この街のみなさんは、どこよりも震災の痛みを感じていると思います。」
「ここで歌うことを迷ったんですが、この場所で歌いたいと決めました。」
「少しでも義援金を届けたいと思ってます。ご協力、お願いします。」
「そして、」
「みなさんの気持ちを、みなさんの言葉で伝えてください。」

神戸の街中で、
私が地面に座って見上げていた光景を、
キーボードと、両脇のスピーカーと、発電機と、川嶋さん。

歌のあいだでさえ、川嶋さんの脇の募金箱には、
次から次へと募金の手が差し伸べられていた。
見たことのない、本当に愛に溢れた光景だった。

明るい空と、
渾身の「カケラ」を、
歌声とともに聞こえてくる募金の音を、
私は忘れないだろうな。

「寒い中、本当にありがとうございました。」
「全額、被災地に届けます。」
「よろしかったら、ご協力、よろしくお願いします。」

歌い終わり、
たくさんの人が川嶋さんの周囲に集まっていった。
本当にたくさんの人が、募金をしていた。
その人垣の隙間から見える川嶋さんは、
本当に嬉しそうな笑顔を見せていた。




私たちは、すぐに川西へ移動する。
到着したアステ川西でも、
大きな吹き抜けの大きなフロアの周りに、
フロアの上にも下にも、本当にたくさんの人が集まっていた。

川嶋さんは、
「私の、大切な歌です。」
「被災地の方々へ、99%の絶望の中でも1%の希望を伝えたい」
と言って、「天使たちのメロディー」を歌い、
「今は卒業や入学をひかえた時期でもあるんですが、」
「そういう子供たちに希望を持っていてもらいたい」
と言って、「12個の季節」を歌った。
大きな吹き抜けの、大きな反響の中、それらの歌は力強く響き渡っていた。
なぜか私には、重く重く伝わっていた。

「少しの愛をわけて下さい。」
ここでも川嶋さんは、そう伝えていた。
絶え間ない長い長い募金の列は、いつまでもどこまでも続いていた。





心斎橋ビッグステップ

心斎橋は、小振りの雨がちらついていた。
私はこの3日間を想いながら、
静かな小雨の街に、静かに佇んでいた。

つい先程、川嶋さんは心斎橋の路上で歌ってきたと言う。
その情熱は、変わらない。

「何かをしなければと、今、誰もが思っていると思うんですが、」
「私は、この五日間、広島、福岡、山口、神戸と歌ってきました。」
「大阪のみなさんも、協力して頂けると嬉しいです。」

大阪、最後は12個。
川嶋さんは、この数日間、
「被災して卒業式を迎えられなかった人たちへ」
ということも、何度も言っていた。
それぞれの人たちの、大事なシーンをも、想っていた。
それぞれの、大切な時間。

「寒い中、本当にありがとうございました。」
「この春、新しい生活を始める人も多いと思います。」
「この歌が、大切な卒業式の代わりになってくれたらと思って歌います。」

十分でない機材、
音がスカスカなキーボードでの、
学芸会みたいな12個の季節、
でも、想いに溢れる、素敵な12個。

「お聞き苦しかったと思いますが、最後までありがとうございました。」
「みなさんにお願いがあります。」
「よかったら、募金のご協力をお願いします。」

最後、募金のとき、
川嶋さんが私に手渡してくれた一枚も、12個の季節だった。
大切にしよう。

そして、最後の笑顔が、やっぱり一番素敵だった。

いつも、ありがとう。



最後の日まで、川嶋さんは、来たそのままの姿で歌っていた。
歌い終わり、募金の列が終わり、機材も片付き、
川嶋さんは、歩いて、その街中に帰っていった。

そしていつもの街の風景に戻る。





私は、ここに来なければ気付けなかったかもしれない。
そういう何かが、そこにあった気がした。


本当に、ありがとう。

(2012.07.18掲載)